オーディオと電源

Roger Nichols Digital InspectorXLを試す

前項までは WAVES PAZ を利用して解析を試みました。その結果、緻密な比較を行うような用途においては限界があるという点が浮き彫りになりました。OSX、ProTools6以降、本格的アナライザー・プラグインは空位のままでしたが昨年、Roger Nichols DigitalよりInspectorXLがRTAS、AU、VST対応プラグインとして発売されました。そこでInspectorXLを使用して精度等を探っていこうと思います。

InspectorXL について

まず、InspectorXL自体が各種メーター類の集合体となっています。

  • Level Meter H(水平表示のレベルメーター)
  • Level Meter V(垂直表示のレベルメーター)
  • Spectrum Analyzer(FFT、スペクトラグラム、1/3オクターブ・バンドアナライザー)
  • Statistics(クリップ、オーバーロード等の問題を監視するプラグイン)
  • Stereo Analyzer(バランス、コアレイション、フェイズスコープ)
  • Multimeter

で構成されます。

InspectorXLによる解析

ここでは主にFFT Analyzerを使用していきます。

FFT Analyzer

リアルタイムのピーク表示とピーク・ホールド、アベレージ(RMS)を表示することができるため、ダイナミクスの確認には重宝する機能だと思います。必要に応じて各パラメーターを細かく設定できる点も優秀です。では、ピーク・ホールド機能を使いその精度を探っていこうと思います。Peak HoldのHold値は最大10.0secまでという仕様です。さらにMemoryには3個までの情報が記録できますが、記録するタイミングはMの下の矢印をクリックするタイミングに依存しています。そのため、正確に同じタイミングで記録するには少々工夫が必要です。

測定

FFT Analyzer グリッドモード

グリッドモードにし、セレクタで任意の範囲を正確に9secの長さで選択してPeak Holdを最大数の10secに設定すると、Decayまで1secのタイムラグが出来ます。この間に矢印をクリックすれば9secの尺で同じものを計測できるはずです。音が切れて1秒がクリックするタイミングです。この条件で測定した結果を見ていきます。PAZで行ったテストと同じく、同一トラック、同一範囲で3回測定してInspectorXLのMemoryに蓄積します。

測定結果

まず、Memory1(黄)を表示させてみます。

Memory1表示画面

さらにMemory2(赤)を表示します。

Memory2表示画面

完全にMemory1の上に重なっている状態が読み取れます。

続けてMemory3(青)を表示します。

Memory3表示画面

Memory3を表示しても完全に重なります。ちなみに、僅かでも誤差があれば違う色が顔を出します。これは非常に優秀と言えるでしょう(何度か1秒間にクリック出来ず失敗しましたが、差があればちゃんと表示されました)。

機器の特性を調べるにはピンクノイズ、ホワイトノイズ、さらにサイン波マルチトーンを生成するなど様々な方法がありますが、音楽信号をちゃんと計測できることに意味があると考えます。ほとんどの方は普段聴いているのは音楽であって、計測用の信号を聴いているのではありません。
とはいえ、このような測定ができるようになったのもパソコンを含むIT技術の目覚ましい進歩があってのことです。高性能な測定器で知られるAudioPresicionですらリアルタイムに描画する機能は最新のAPx585からです。CPUの高速化によって描画をPCに担わせることで実現したそうです(AP2700は本体DSPで演算し適宜間隔で表示部となるPCに送るという仕様)。

音の比較にあたり、InspectorXLの実力は十分に機能を果たすものと言えそうです。あとは測定データをエクスポートできれば言うことはないのですが・・・