オーディオと電源
電源環境によるDigidesign ProToolsHD 192I/Oへの影響
前項のブレーカ比較では民生用CDプレイヤー(オーディオ愛好家向けとしてはエントリーモデル)の電源を比較するというものでした(これは追って、InspectorXLを使い再検証を行いたいと思います)が、今回は別の手法を採りたいと思います。ご存知の通り、ProToolsHD+192I/Oの組み合わせは世界中のスタジオで最も普及しているスタンダードと言えるものです。今や、世界中の録音はProToolsで行われると言っても過言ではありません。このProToolsHD 192I/Oにおける電源環境を考察することによって、実践的なオーディオ電源環境を構築することが可能になると考えます。
まず、サンプルとなるCDをProToolsに取り込みます。このとき、セッションのサンプルレートは192kとして変換し、Importする手法を採ることとします。
サンプルを数曲選択。トラックにインポートし、Anarog Out 1-2から出力するように設定します。
4曲をトラックにインポート。マスターフェイダーとAUXを確認用に設けます。
さらに、Analog Out 1-2をAnalog In 3-4に繋ぎます。
それぞれの楽曲を任意の範囲で選択し、電源環境を変えながら録音を重ねます。つまり、MacのHDDから192I/OのDAを経由し再びADから取り込みHDDに記録するというものです。
電源の環境を変えたのは192I/Oのみで、Mac本体はUPS経由、クロック等は通常の壁コンセント経由で電気を供給します。記録結果をAnalog Out 3-4にインサートしたInspectorXLで計測していきます。
一見、無意味にも思えますが、どのような結果をもたらすでしょうか。
まず、力率によってどの程度影響を受けるか。という点に注目してみました。当社にちょっと古い業務用のエアコンが付いているのですが、これがフル稼働すると力率が99.x%に落ち込みます。業務用のモーター類に比べれば微々たる値ですが、音響機器への影響があるか調べてみたいと思います。環境はブレーカー比較時と同じく、専用分電盤のBUSバーにケーブルを結線し、中間にブレーカーを介して192I/Oに直接電気を供給します。ケーブルは三菱CV3.5-3Cを使用、ブレーカーは三菱BL-2Cを使用しました。
測定はInspectorXLを試用したときと同様、電源環境を替えて録音した素材を再生し計測します。再生に使用した音楽・楽曲は
- ・Robert Miles / 23am
- - 3.Every Day Life
- ・Dream Theater / Falling Into Infinity
- - 6.Hell's Kitchen
- ・Brandy / Never Say Never
- - 15.Tomorrow
- ・Nitin Sawhney / Beyond Skin
- - 5.Tide
さらにトラックの一部分を9sec選択し記録を取ったのが下のグラフです。青のグラフが力率100%の状態での周波数特性です。

これに力率99.1%の状態で録音したグラフ(赤)を重ねます。完全に重なることがお判りいただけるでしょうか。全く同一の周波数特性と言えます。(Memoryボタンを1、2両方押し、両方とも表示させている状態です)

ちなみに変化が確認できる例として、ケーブルを当社のAirCableに替えた場合の計測結果を示します。黄色がケーブルを替えて測定した結果です。差異が分かりやすいようにMemory1、3を表示しています。

このように、モーター類等々が存在せず、大幅な力率改善が必要なケース以外では大きな影響はないと考えられます。余程のことがなければ、進相コンデンサーは必要ないと考えられます。
一般住宅では省エネ対策のためインバータ等のスイッチングを行う機器が増え、むしろ、その方が問題になると推測できます。オーディオ機器自身がスイッチング電源を採用していたりと問題は複雑です。最近では太陽光発電も一般的になってきましたが、直流を交流に変換するためにパワーコンディショナーと呼ばれる装置が必要となります。当然、この類いもスイッチングを行う機器ですので注視する必要があります。建築年数の経過したビル、マンションではエレベーターのモーターに旧式のインバータが使われ、エレベーター機械室に近い部屋でキーンというノイズが飛び込んで来たという例もあります。これに比べれば、近年のパワーエレクトロニクスの分野は飛躍的に発展していますが、オーディオにおいては要確認と言えます。
また、家庭内LANにおいて電力線通信(PLC)が登場しました。純粋に通信用途とした場合、充電器等も含めたスイッチング機器が電源系統に繋がっている場合、明らかに通信速度が低下するという報告もあります。スイッチング機器も格段の進歩を遂げ、昔のように可聴領域にノイズが飛び込んでくることは少なくなりましたが、オーディオの分野では一部で敬遠されているのも事実です。
この辺は追って試してみたいと思います。
